つい先日、防水屋さんやペンキ屋さんが材料が入ってこないので工事は受けられませんと言われていたのがついに我々、大工の
元にも影響が出て来た。
建築業界に身を置いて50年、オイルショックもリーマンショックも乗り越えてきたが、今のパーチクルボード不足は異常だ。リフォーム現場の足元を支える資材が消えた今、我々プロには「知恵」と「段取り」の転換が求められている。かつての常識を捨て、この難局をどう切り抜けるか、現場の最前線から提言したい。
パーチクルボード不足という現実と向き合う

ホームセンターの棚が空になる異常事態
かつては足りなくなれば近くのホームセンターに駆け込めば済んだものが、今はどこへ行っても「次回入荷未定」の札が下がっている。リフォーム会社の経営者として、これほど現場の士気を下げる光景はない。
パーチクルボードは床の下地や家具の芯材として、現代の建築には欠かせない存在だ。それが手に入らないということは、工事が止まることを意味する。
我々のような小規模な会社にとって、資材の在庫切れは死活問題だ。入荷を待っている間に職人の手は空き、経費だけが膨らんでいく現実を直視しなければならない。
なぜ「入ってこない」のか、現場の視点
物流の混乱や海外情勢、原材料の高騰など理由は様々言われているが、現場レベルで感じるのは「優先順位の低下」だ。大規模な新築現場に資材が優先され、我々リフォーム業への供給が後回しにされている実感を強く持っている。
70代の私から見れば、今の状況は「物がない」のではなく「物が届かない」構造的な欠陥に近い。昔のように地元の材木店と顔を突き合わせて交渉するだけでは、太刀打ちできない時代になったのだ。
この「待ち」の姿勢を続けていては、会社は潰れる。自らが動いて資材を確保する、あるいは仕様を根底から変える決断が今、問われているのである。
在庫切れ時代を生き抜く代替資材の選定術
合板(ベニヤ)への切り替えとコストの妥協点
パーチクルボードが入らないなら、構造用合板への切り替えを即座に検討すべきだ。確かにコストは上がるし、遮音性や加工後の挙動も異なるが、現場を止めるよりは遥かにマシだ。
私は現場監督に対し、床の厚み調整のために合板を重ね貼りする手間を惜しむなと指示している。コスト増分については、最初から見積もりに「資材高騰リスク」を盛り込む勇気が必要だ。
「安くて使い勝手が良い」パーチクルボードに依存しすぎていた自分たちの慢心も、この機会に改めなければならない。代替資材の知識を深めることは、結果として会社の提案力を高めることになる。
下地材の仕様変更を標準化する
石膏ボードの下地や壁の補強にパーチクルボードを使っていた箇所は、LVL材(単板積層材)やMDFへの変更も視野に入れている。特に水回りなど、湿気が気になる場所ではMDFの弱点を理解した上での運用が不可欠だ。
昔の職人は、ある物で何とかするのが当たり前だった。今の若い職人には「これがないとできない」と言う者も多いが、我々ベテランが代替案を論理的に示し、背中を見せるべき時だろう。
設計段階から「Aが入らなければBで対応する」という二段構えのプランを標準化しておく。これが今の時代、リフォーム現場を円滑に回すための最低限の作法だと私は確信している。

工期遅延を防ぐ「現場管理」の鉄則
発注タイミングを1ヶ月前倒しにする勇気
「着工してから発注する」という従来のリズムでは、今の時代は100%工期が遅れる。私は全ての資材について、契約直後、着工の少なくとも1ヶ月前には発注をかけるように徹底させている。
保管場所の問題はあるが、自社倉庫を整理してでも資材を先に確保するメリットは大きい。現場に物が届いている安心感は、職人のパフォーマンスにも直結する。
70年間生きてきて、これほど先読みが重要な時代は初めてだ。経営者として、現場の「もしも」を予測し、先に手を打つことの重要性を痛感している。
施主への「正直な説明」が最大の防御
資材が入らないことを隠して、直前になって「遅れます」と言うのが最悪の対応だ。私は最初の相談段階で、パーチクルボードを含めた建材の入荷状況が不安定であることを包み隠さず話すようにしている。
施主はプロではないから、業界の混乱を知らないことも多い。正直に「納期がずれる可能性がある」「代替品を使う可能性がある」と伝えることで、信頼関係が深まることもあるのだ。
契約書にも資材入荷の遅延に伴う免責事項を明記することを忘れてはならない。守りの管理を徹底してこそ、攻めの経営ができるというものだ。
70代の経営者が教える、仕入れルートの多角化
地元の建材屋との「古き良き」関係性がモノを言う
インターネットで安く買う時代だが、最後の一枚を融通してくれるのは長年付き合いのある地元の材木店だ。私は今でも、週に一度は馴染みの店に顔を出し、世間話ついでに入荷情報を仕入れている。
「困った時はお互い様」という商売の基本は、DXだのAIだのと言われる令和の時代でも変わらない。信頼の積み重ねが、在庫切れの棚から自分の分だけを取り出してくれる魔法になる。
大手メーカーの供給網が切れた時こそ、地域のネットワークがモノを言う。若い経営者たちには、効率化の裏側にある「人間関係」という強力なインフラを軽視してほしくない。
ネット通販とリアル店舗のハイブリッド管理
一方で、古い人間だからとネットを敬遠してはいけない。モノタロウやプロ向けのECサイトを24時間監視し、入荷通知設定を駆使することも現代の「足で稼ぐ」行為の一つだ。
ホームセンターの在庫状況をスマホで確認し、朝一番で軽トラックを走らせることもある。足と指、その両方を使い倒して初めて、必要な資材を揃えることができるのだ。
伝統的な人脈と、最新の検索能力。このハイブリッドな立ち回りができて初めて、入荷未定という荒波を乗り越えられる。リフォーム業界の意地を見せようではないか。
変化を恐れず、現場の誇りを守り抜く
パーチクルボードが足りないという事態は、単なる物不足ではない。これまでの「当たり前」が通用しなくなった時代のシグナルだ。だが、我々リフォーム業の使命は、どんな状況でもお客様の住まいをより良くすることにある。
資材がなければ工夫すればいい、ルートがなければ作ればいい。70代の私が今も現役でいられるのは、こうした「泥臭い対応力」こそがプロの証だと信じているからだ。
在庫切れに嘆く時間は終わりだ。今ある資材、今できる最高の工法、そしてこれまで築いた人間関係の全てを動員して、目の前の現場を完成させよう。それが我々プロの責任である。